ノリサの安藤忠雄論

2005.3.12安藤忠雄が富山に講演会にやってきました。
大学時代から好きだった建築家の言葉は、ややお決まりの演説トークだったが
それでも、その言葉には魂が宿っていて僕はその言葉の渦に巻き込まれそうに
なったが、大学生の頃と違い自分も小さいながら渦を巻いて抵抗している事に
気付いた!そんなこんなでちょっと安藤建築を振り替えろうかな〜と思って、書きなぐって
見ました。暇な人は読んでみてね!

形のついて

え〜確か初めてみた安藤建築は東京の青山にある「コレッツィオーネ」だったと思う
建築のケの字も知らないような状態で、友達と「建築マップ」を持って見に行った
いくつかの建築の中の一つだった。今でもなんとなく記憶にあるが、やや薄ぐらく地下へ
流れ込む階段や上へ導く階段の上部から光がぼや〜と入ってきていて
幻想的だったのを覚えている。何にもまして、コンクリートの外壁がカッコ良く見えた。
今でも思うが、コンクリートなだけでカッコイイのだ!そしてコンクリートはそのシンプル
さゆえに形態をデホルメし、光の濃淡がはっきり見え、天候的な変化をアート
に変える魔法の素材である。この魔法の素材の特徴を最大限に生かしているの
が安藤建築だ!光の入れ方、影の落とし方を十二分に研究し、自分の形態的
造形力を引き立たせている。「光の教会」 が解かりやすいが、光の入れ方、
空間の作り方は天才的である。しかし、一方で造形力と比較するとそんなにない
であろう色使いのセンスや、いろんな素材を組み合わせるセンスは素材を限定する事
で対処されている。又、限定しなければ造形が生きてこない!つまり、コンクリート
という材料は安藤忠雄の才能をもっとも引き出せる素材であると言える。
初期の作品にはレンガとコンクリートのコントラストで見せている作品が目立つ!
例えば「RIN'S GALLERY 」であるが、確かにレンガが建物の雰囲気を上手く
作ってるが、素材が前に出すぎて形態のインパクトが薄れているし、中庭的な表情
も変化に乏しく見えてしまう。もちろんデザイン的には2色使いの方が華やかで
楽しい感じがするので普通そうするのだが、何処か表層的で五感に直接入って
こない!本物のレンガ積みだったらそんな事もないのかもしれないが、しょせんは
工法的に偽者だという事なんだろう!キレイに見せる為につくろっている感がどうして
も建物から出てしまう。

そう思ったかどうかは解からないが、安藤の建物はコンクリートを使う事を前提に
そのボリュームをキレイに見せる事を重視していく「小篠邸」1983年竣工 は
直方体の建物がきれいに2つ並んでいてこれぞコンクリート造形といった感じである。
安藤建築の何が素晴しいってやっぱり平面図のボリューム構成だ!
建物部分と外部部分が見事に入り混じり一つの絵画のようだ!
断面図も素晴しいがやはり平面図のバランス感覚こそ安藤の最大の武器である。


以降、コンクリートでどんどんどんどん作り続けるが、困った事が発生する。
建物が大きくなりすぎたのだ!コンクリートはその重厚感から、あんまり大きな建物
には向かない、威圧感が出すぎてしまうのだ!威圧感を出さない為は、壁の表情
を緩める、空間を抜く、ボリュームを区切る等の方法があるが、この1と2は
壁で見せる事をむねとするコンクリート建築には面白くない!ゆえにどうしても
もう一つ素材を持ってこなければならなかったのだ!となれば、当然その材料とは
ガラスである。コンクリートと全く反対の性質を持っているので建築にも当然
幅ができ、全体的なイメージを2色(2パターン)で構成する事が可能となる。
そうして出来たのが「サントリーミュージアム」 である。ボリュームを区切り、2つの
テクスチャーを使い、ぎりぎり建物の大きさによるイメージを抑えている。

以後その手法は基本的には変わっていない!
兵庫県立現代美術館」「フォートワース近代美術館」では、長方形を並べる事で
壁の存在を長手に出すと共に、ボリュームを区切り、ガラスを使ってさらに存在を抑え、
同時に空間に外部、中間部、内部(コンクリート)と三つの空間密度を使って奥行き
を出している。ボリューム構成は熟練され、もはや文句の付けようがない、ただただ
感動するだけであるが、ここにきて2005年、安藤建築は大きく変わる「ピノー美術館」
である。セーヌ川の中洲である32,000uの敷地に浮遊するこの建築は述床で60,000u
にもなる超巨大建築物だ!長手に300Mにもなるこの建築を安藤は「ガラスの船」で
表現しこのコンペを勝ち取っている。300M?謎の寸法である。小学校の長さを思いだしてほしい。
60Mくらいだろうか!それが5つ分である。ありえない!もはや素材がどう、ボリューム
がどうとかいうレベルではない!デザインにはなりえないだろう!大型ショッピングセンター
が浮いてうるのだ、しかも、内部に光を落とさない大きな一つの物体として・・ 体育館がスケール
アウトしているように、どうしようもないのが普通である。一つ参考例がある。菊竹清訓の
東京都江戸東京博物館」である。メタボリズムドリームの代表作品であるこの建物は述床 48,000u
と かなり大規模な建物でその巨大ボリュームのピロティーはそれはもう凄まじい!
建築ってここまでできるのか〜とただただ唖然とするスケールがそこにある。
しかし、その大きさゆえに、ピロティーの高さを高くしなければならず、すさまじくアンバランスな
建物である。この凄まじく大きなボリュームを一つの記号として表現しているこの建築は
スケールアウトしているという他ない!
一方「ピノー美術館」は模型だけではよく解からないが、安藤が取った手法は、浮いている建物
ピロティーの天井
のラインは揃えながら、地盤面を下げるという手法である。
こうする事で、敷地内にセーヌ川の雰囲気を呼び込み、超巨大な町のステージを
作り上げている。「大阪府近つ飛鳥博物館」と同じコンセプトであるが、この場所で
やる意味はかぎりなく大きい、ぜひとも成功であってほしい!これが成功すれば
「世界一の建築家」と言っても過言ではないだろう!