兵庫県立美術館「芸術の館」 /安藤忠雄

H14に竣工したこの巨大な美術館は旧兵庫県立美術館(村野藤吾)からバトンタッチされた建物である。
またこの建築は神戸市の「水際広場計画」と同時に計画されている為、湾岸沿いに関連性のある広々とした
空間を作りだす事に成功している。


 

水際広場から兵庫県立美術館を見る

やって来ました兵庫県立美術館!実は今年(H16)の正月あたりに来ていたのですがその時は休館日(あたりまえですが)だったので中には入れなく、次の機会を待っていたのですが、今回所用でこっちの方に来る予定が出来たのでちょっと寄ってみました。

で、ちょっと早く着きすぎたので公園を散歩してみました。思ったよりも公園と建物の繋がりは意識されていませんでしたが、スロープや柱がほどよくリズムを作り出していました。(柱の高さ、位置関係なんかは絶妙です)

 

 

 

 

神戸湾を望む建物(南面)

湾岸部のレベルがメイン道路(北側)に対してかなり下がっている為に、安藤ちゃんお得意の階段型広場でデザインされている。周囲より建物の位置を上げた方が見栄えがよくその意味でも妥当な所なんだが、贅沢な話である。又、この建物から望む景観は決して美しいものではなく、ここに座るぐらいなら公園の方に座ります。勾配もきつい感じだし・・・

 

 

 

 

北西から建物を望む

車で来られた方はここを右に曲がって地下駐車場に停める事になりますが、1時間400円というナメタ価格設定です。(美術館を使用すると2時間で400円)。僕の場合共通券(常設+企画展)1500円、オムライス1200円、3時間いたので駐車代800円の4000円コースでした。*建物見学の方は常設展(500円)のみにしましょう!ほぼ問題ないです。

 

 

 

 

 

駐車場からエントランスホールへ向かう

で、僕は車で来たので地下駐車場に止めて建物に向かった訳ですが、なんと外を通るアプローチなんですね〜インドの階段井戸 をイメージしたものなんでしょうが、建物の見え方が絶妙です。だた、一番上の段が屋上に対して一段上がっていてつまづきそうになるので、なにしてんのって感じですが・・これが意外とつまづくんだな・・僕なんか2回も躓いてしまって(笑)

 

 

 

 

北側エントランス

 

おそらくメインエントランスになるのだろうが、建物高さが高くてこの程度の幅ではやや薄暗い感じである。なんか、意味もなく建物の奥に導かれている感がある。今回の設計において基本的にはフォートワース現代美術館 と同じように長方体を並べて構成されているが、実際の美術館内の動線においてその形態的な特性はほとんど利用されておらず、個人的には非常に残念だ。

*計算かどうか解かりませんが写真左の光の筋はいい感じでした。後、正面のエレベーター内は光るので是非乗ってみましょう!

 

 

 

 

ホール前

 

階段井戸を登るとここに出ます。スロープは駅に通じていて、写真センターはメインエントランスからのアプローチなんですが、なんと青い塗装のローラー仕上げのチケット売り場がおいてあります。(上の写真奥)安藤さんが見たら怒るだろうな〜しか〜し、この大規模な美術館にチケット売り場が一箇所(窓2つ)じゃね〜。てか、なんかバランスの悪い建物なんだよな〜このホールも円状の壁に沿ってエントランスホールに導かれていい感じなんだけど、なんか狭い・・・(全体のバランスに対してですが・・数人しか通らないとすれば、このボリュームは適切でエントランスホールとの大小の変化的にもいい感じです。)

 

 

 

 

メインエントランス

 

このホールもなんかバランスがいまいちな気がします。長細すぎる!あ!ちなみに写真中央の扉は公園側の入口です。

この右側が展示室になります。ホール→吹き抜けの階段室→展示室と変化していきます。吹き抜けの階段室を緩衝体としているので、ホールとイメージ的に切れていい感じです。(贅沢な話ですが・・)

 

 

 

 

吹き抜けの階段室

 

でこれがその緩衝体な訳ですが、ホール部分対して空間的に連続させない事で展示室まで落ち着いた雰囲気を形成しています。

美術館としてホールと展示室をどの程度離すかは機能的⇔趣をどの程度表現するかによる訳ですが、そのアプローチを縦方向に表現するってのも結構いいもんだな〜と思いました。(外部に面してないのがちょっとね!)

谷村美術館/村野藤吾

 

 

 

 

常設展示室

 
常設展示室、企画展示室共にパーテーションによって自由に間仕切りを変更できるようになっていました。階段室の照明とのデザイン的な連続性も流れがあっていい感じです。注目すべきは間仕切りの厚みです。40cmぐらいあり、間仕切の欠点であるあの安っぽさが消えています。スバラシイ!鉄骨なら薄くてもいいと思うけど・・RCはこうでないと!

 

 

 

 

常設展示室から北側アプローチを見返す

 
北側アプローチからは展示室の中が見えるのですが、こうする事で全体的に一つの動線になると共に期待感を持たせる事ができます。ほんとはもっと凄い空間、でそこに行きたくなるような場所を見せるのが効果的なんですが・・ドラクエで一度メインホールを見せておいて(でも下には降りれない)どうやってそこまで行くんだ〜的な感じの所がありますがそんな感じ・・

 

 

 

 

企画展示室の入口前からギャラリー部の建物を見る

 
この建物で一番納得いかないのがこのスペースである。写真右下の(吹き抜け下)の階段を通って、写真左のコンクリートの壁の奥の空間から企画展示スペース前に行くのだが、なんとこの空間は通らないのである。この建物を初めて見た時、この空間の相互関係を大切にしたプランなんだろうな〜と思ったのだがこれが全然意識してないから驚きだ!写真を見て解かるように通路的な幅しかなくここでどうこうさせようとしていない!普通ここを休憩室にしたりするんじゃないのかな〜

 

 

 

 

企画展示室前だけど普通通らないスペース

 

方立てがでかすぎてあまり向こう側を意識した設計になっていない!あえて区切っているようにさえ見える!こんなのはガラス面から程よく距離がないと空間的に繋がってきません。フォートワース現代美術館 ではそこらへん意識されていて、かつ直方体間が水辺で区切られている為にとてもいい感じになっているのですが・・・この建物の場合、変にイメージ的に連続してしまっています。

*企画展示室から出たところでは(一番左の直方体)このスペースを使いますが・・・

 

 

 

 

美術情報センター

 
ここだけ全然色使いが違います。展示室と構成は似たり寄ったりですが、照度と色使いでここまで違う空間になるといういい見本です。ぜひ寄ってって下さい

 

 

 

 

屋上広場(ほとんど誰も使わないけど・・)

 
この設計の最大の謎は、この建物間を全然プランニングに組み込んでいない事です。例えばここにレストランがあったり、休憩所があったり、渡り廊下があったりいかようにも方法はあるはずなんですが・・・まさか散歩する人の為に内部と空間を切っているだけだとしたらあまりにもお粗末な考え方です。湾岸部より楽しい空間になるはずはありません。2枚目の写真を見ても解かるようにあくまでこの建築は、外部にたいして閉ざしてます。(階段で受けてはいますが)誰もあの階段を登ってこの空間には来ないつ〜の!

 

基本的には見所満載のスバラシイ建築なんですが、もっとよくなる要素がテンコ盛りだったように
思え、ちょっとガッカリしました。皆さん確認して来て下さい。大体、レストランにしてもすぐ目の前を植栽
で遮って、神戸湾の方を見えないようにしてるんですよ!なんなの一体って感じです。

 

 

studioそら一級建築士事務所